コンタクトセンター
自治体BPOの事例3選|委託できる業務や導入メリット、成功のポイントを解説
職員数が限られる中で、住民対応や申請処理などの業務量は年々増え、自治体では業務の一部を外部事業者へ委託する「自治体BPO」の活用が広がっています。ただ、実際にどのような業務を委託でき、どのような効果が出ているのかは、具体的な事例を見なければイメージしにくいものです。
この記事では、自治体BPOの基本的な考え方や活用が求められている背景、委託されている主な業務を整理したうえで、自治体の導入事例3選を「課題・実施したこと・成果」の順で紹介します。事例からわかるメリットや、導入を成功させるポイントもあわせて解説します。
自治体BPOとは
自治体BPOとは、自治体の業務プロセスを外部事業者へ委託し、業務の効率化や品質向上を図る取り組みです。まずは、BPOの基本的な考え方と、一般的な業務委託との違いを確認しておきましょう。
BPOとは業務プロセスを外部事業者へ委託する仕組み
BPOは「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の略で、業務プロセスを外部事業者へ委託する仕組みを指します。単発の作業を外部へ任せるのではなく、受付や処理、問い合わせ対応といった一定の業務プロセスをまとめて委託する点が特徴です。
自治体では、住民からの問い合わせ対応や申請書類の受付・処理など、継続的に発生する業務でBPOが活用されています。業務の流れ全体を外部事業者が担うことで、職員は個別の作業ではなく、制度の運用や判断を要する業務に集中しやすくなります。
一般的な業務委託との違い
一般的な業務委託では、あらかじめ決められた作業を実行することを委託するケースが多く見られます。作業の手順や進め方は自治体側が定め、外部事業者はその指示に沿って作業を行う形です。
一方、BPOでは、業務フローの設計や標準化、運用開始後の改善まで含めて外部事業者が担うケースがあります。人員不足を補うことだけを目的にするのではなく、業務そのものを見直し、改善していく視点を持つことが、BPOを活用するうえで重要です。
自治体でBPOの活用が求められている背景
自治体でBPOの活用が広がっている背景には、職員数の制約や行政サービスの多様化、国が進める窓口改革など、複数の要因があります。ここでは、代表的な3つの背景を紹介します。
限られた職員で多様な行政サービスに対応する必要がある
制度の変更や住民ニーズの多様化により、自治体が対応する業務は年々複雑になっています。マイナンバー関連の手続きや外国人住民への対応など、新たに加わる業務も多く、限られた職員で幅広い行政サービスを提供し続ける必要があります。
定型的な事務処理に職員の時間が割かれると、企画立案や相談対応など、職員だからこそ担うべき業務へ十分なリソースを割けなくなります。BPOによって業務を切り分けることで、職員のリソースを本来注力すべき業務へ再配分できるようになります。
窓口改革やDXとあわせた業務の見直しが進んでいる
デジタル庁は「書かない、待たない、回らない」窓口の実現を掲げ、自治体の窓口DXを推進しています。住民が何度も同じ情報を記入したり、複数の窓口を回ったりする負担を減らすことがめざされています。
ただし、システムを導入するだけでは窓口改革は十分に進みません。バックヤードの事務処理まで含めて業務フローを見直すBPR(業務改革)が重要とされています。BPOについても、既存の業務をそのまま外部へ移すのではなく、業務フローを見直したうえで活用する視点が求められています。
繁忙期や突発的な行政業務へ対応する必要がある
給付金や補助金の支給事業のように、短期間に大量の申請が集中する業務が突発的に発生することがあります。こうした業務は、通常の体制だけで対応しようとすると、職員の残業増加や処理の遅れにつながりやすくなります。
BPOであれば、恒常的に職員を増員するのではなく、必要な期間や業務量に応じて外部のリソースを活用できます。実際に、補助金の事務局業務や給付事業でBPOを活用し、短期間で受付から支給までの体制を構築した事例も見られます。
自治体BPOで委託されている主な業務
自治体BPOの対象となる業務は、住民と直接接する窓口業務から、庁内で発生する事務処理まで多岐にわたります。ここでは、委託されることの多い代表的な業務を3つに分けて紹介します。
窓口・コンタクトセンター業務
住民からの問い合わせ受付や総合案内、電話交換などの業務は、自治体BPOの中でも代表的な委託対象です。専門のオペレーターが一次対応を担うことで、担当部署へ直接かかる電話を減らし、職員の負担を軽減できます。
また、FAQやチャットなどのチャネルを組み合わせることで、問い合わせ対応そのものを効率化できます。住民が必要な情報へたどり着きやすい環境をつくることも、コンタクトセンター業務の重要な役割です。
申請受付・審査などの事務局業務
給付金や補助金などの事業では、申請の受付から内容確認、審査、問い合わせ対応までを一連の事務局業務として外部委託するケースがあります。短期間に大量の処理が発生する業務でも、業務に必要な体制を短期間で構築できる点がメリットです。
電子申請フォームや進捗管理システムと組み合わせれば、申請状況の可視化や入力ミスの防止にもつながります。受付から支給までの流れを一体で設計することで、業務全体の効率化を図れます。
バックオフィス業務
書類の確認やデータ入力、帳票の作成など、庁内で発生する定型的な事務処理もBPOの対象です。業務を標準化したうえでBPOへ移行することで、特定の職員に業務が集中する属人化を抑えやすくなります。
窓口などのフロント業務だけを委託しても、バックヤードの処理が滞れば住民サービスは向上しません。フロントからバックヤードまでを含めて業務を設計することが、自治体BPOを効果的に活用するポイントです。
自治体BPOの導入事例3選
ここからは、自治体がBPOを導入した3つの事例を紹介します。それぞれの事例について、自治体が抱えていた課題、実施したこと、得られた成果の順で整理しているため、自団体の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。
都道府県|約2.2万施設を対象とした補助金給付事業を1ヶ月で立ち上げ
ある都道府県では、光熱費高騰の影響を受ける約2万2,000の医療機関等を対象に、一時支援金を支給する事業を実施することになりました。年度内の約2ヶ月間で受付から支給までを完了させる必要があり、膨大な給付業務を迅速かつ適正に処理できる体制を短期間で構築することが課題でした。
この事業では、NTTマーケティングアクトProCXが、広報サイトの立ち上げや電子申請フォームの構築から、コールセンターの運営、審査事務、交付決定通知の作成・送付までをワンストップで支援しました。申請状況をリアルタイムで確認できる給付管理システムを導入し、自治体と医療機関、事務局の間はチャットツールで連携する体制を整えています。
その結果、環境整備から事務局運営までの体制を1ヶ月で立ち上げ、円滑な支給を実現しました。入力ミスや記入漏れを防ぐ電子申請フォームによって、申請者と運営側の双方の負担を軽減しながら、迅速かつ正確な給付につなげた事例です。
堺市|がん健診の予約・相談業務を集約
堺市では、がん検診の予約手段を増やすことや、効果的な受診勧奨を行う体制の整備、がん患者からの相談を受け付ける体制の構築などが課題となっていました。あわせて、検診制度の認知度向上や、予約受付システムのセキュリティ対策も求められていました。
そこで、NTTデータ・マーケティングアクトが運営する「がん健診総合相談センター」を設置し、従来の電話受付に加えてWeb予約システムを構築しました。市のデータベースと連携して受付チャネルを拡大したほか、コール・リコール制度による受診勧奨や、医療系資格取得者が応対する相談体制も整えています。
その結果、受付チャネルの拡大による受診機会の創出と、情報管理の一元化を実現しました。案内印刷物のデザイン刷新などの広報活動もあわせて行い、市民の認知度や好感度の向上にもつながっています。
神戸市|生成AIボイスボットで税に関する問い合わせ対応を効率化
神戸市では、税に関する電話問い合わせが年間40万~50万件にのぼり、特に繁忙期には職員の対応負担が増大していました。また、市民サービスの向上と業務効率化が課題となるなか、2028年度に予定する税務部コンタクトセンターの稼働に向けた知見の蓄積も求められていました。
そこで、NTTデータ・マーケティングアクトは、市民からの問い合わせ内容をVOC分析によって可視化し、市のホームページのFAQを拡充しました。さらに、住民税に関する定型的な問い合わせに対して、生成AIを活用したボイスボットによる自動応答を導入しました。
その結果、市民が疑問を自己解決しやすい環境が整い、職員による電話対応の削減や業務効率化、コスト削減につながりました。生成AIの活用により、市民サービスの向上と職員の負担軽減を両立した事例です。
自治体BPOは、業務負担の軽減だけでなく、業務の標準化や属人化の解消、住民サービスの向上にも役立ちます。導入にあたっては、課題を明確にし、委託する業務の範囲や運用体制を適切に設計することが大切です。
また、NTTデータ・マーケティングアクトでは、自治体だけでなく民間企業向けのBPOサービスも提供しています。
例えば、神戸トヨペット株式会社様では、給与計算と年末調整業務をアウトソーシングすることで、人事労務部門の属人化リスクや人手不足の課題を解消。業務の効率化や人為的なミスの削減に加え、DX化や業務改善にもつながっています。詳しくは、以下の導入事例をご覧ください。
事例からわかる自治体BPOのメリット
紹介した事例に共通しているのは、BPOが単なる人手の補充ではなく、職員の働き方や住民サービスの改善につながっている点です。ここでは、事例からわかる自治体BPOのメリットを3つに整理します。
職員が本来注力すべき業務に時間を使いやすくなる
定型的な受付や事務処理をBPO事業者へ移管することで、職員は制度設計や相談対応、高度な判断を要する業務など、行政職員だからこそ担う必要がある業務にリソースを振り向けられます。大田区や札幌市の事例でも、職員がコア業務に集中できる環境が整いました。
自治体BPOは、単なる人員削減の手段ではなく、限られた人材の配置を最適化する施策として捉えることが大切です。職員の負担が軽減されることで、残業時間の削減や働きやすい環境づくりにもつながります。
業務量の変化に対応しやすくなる
給付事業のように短期間で大量の処理が必要になるケースでも、BPOであれば必要な体制を短期間で構築できます。都道府県の補助金給付事業では、環境整備から事務局運営までの体制を1ヶ月で立ち上げ、円滑な支給を実現しました。
繁忙期と通常期で業務量の差が大きい業務は、BPOとの相性がよい業務といえます。自治体内部だけで固定的な人員を確保する必要を抑えながら、業務量の変動に柔軟に対応できる点は大きなメリットです。
住民サービスの改善につなげられる
自治体BPOの目的は、処理速度を上げることだけではありません。窓口の待ち時間の短縮や問い合わせ窓口の整備、予約チャネルの拡大などによって、住民側の利便性向上にもつながります。堺市の事例では、受付チャネルの拡大が受診機会の創出につながりました。
デジタル庁が推進する自治体のフロントヤード改革も、住民の利便性向上と職員の業務効率化の両立を目標としています。BPOを活用する際も、職員の負担軽減と住民サービスの向上を両立させる視点を持つことが重要です。
自治体BPOを成功させるポイント
自治体BPOは、導入すれば必ず成果が出るものではありません。事例で紹介した自治体に共通する取り組みをもとに、BPOを成功させるために押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
BPOの前に業務を整理・標準化する
現状の業務をそのまま外部へ移すだけでは、非効率な業務や重複した作業まで引き継いでしまいます。まずは業務フローを可視化し、不要な作業や重複を整理したうえで、委託する範囲を決めることが重要です。
札幌市の事例のように、業務の標準化をBPOプロジェクトの一環として進める方法も有効です。デジタル庁も自治体窓口DXにおいて、システム導入前のBPRが重要であるとしており、業務の整理はBPOの効果を高める土台になります。
委託範囲と成果指標を明確にする
どこまでをBPO事業者が担当し、どこからを自治体職員が判断するのかを明確にしておく必要があります。役割分担があいまいなままでは、責任の所在が不明確になり、住民対応の遅れやトラブルにつながるおそれがあります。
また、業務を委託したという事実だけで評価するのではなく、処理時間や応答状況など、改善したい成果をあらかじめ指標として定めておきましょう。運用開始後も定期的に数値を確認し、事業者とともに改善を続けることが成果につながります。
自治体業務の実績とセキュリティ体制を確認する
自治体業務では住民の個人情報を扱うため、委託先の情報管理やセキュリティ体制の確認が欠かせません。データの取り扱いルールやアクセス権限の管理など、具体的な運用まで確認しておきましょう。
あわせて、給付事業のように大量の処理が発生した際に体制を拡張できるかどうかも重要です。自治体BPOの運用実績だけでなく、業務設計や運用開始後の改善まで支援できる事業者かという視点で選ぶことが、長期的な成果につながります。
まとめ
自治体BPOは、単に人手を外部へ置き換えるものではなく、業務プロセスを見直しながら、職員が本来担うべき業務に集中できる体制をつくるための手段です。職員数が限られる中で、多様化する行政サービスに対応するための有効な選択肢といえます。
紹介した3つの事例からは、窓口や問い合わせ対応だけでなく、申請受付から審査、支給までを一体的に委託する活用方法や、業務の標準化とあわせてBPOを進める方法があることがわかります。導入前にはBPRによる業務整理を行い、委託範囲と成果指標を明確にしたうえで、自治体業務の実績やセキュリティ体制を備えた事業者を選ぶことが重要です。
アクト編集部
NTTデータ・マーケティングアクト